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猫のくしゃみ<前編>
〜猫のくしゃみの原因〜

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猫がくしゃみをすることは珍しくありませんが、
急に回数が増えたり、鼻水が止まらなかったりした場合は要注意!
もしかしたら命に関わる病気のサインかもしれません。
前編ではくしゃみの原因や予防について紹介しましょう。

監修の先生東山 哲 獣医師(ひがしやま動物病院)

公益社団法人東京都獣医師会杉並支部理事/JSFM ねこ医学会副会長/猫感染症研究会所属
2006年に東京都杉並区でひがしやま動物病院を開院。動物と人への愛情をもって、予防獣医学の推進、最新医療の提供、わかりやすいインフォームドコンセント、ペットのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を掲げる。

ライター:金子 志緒

INDEX

このくしゃみ、もしかして風邪?
家庭でありがちな誤解

猫がくしゃみをしたとき、「寒かったから風邪をひいたのかも」と思ったことはありませんか? 猫のくしゃみは人の風邪と違うので、ゆっくり休ませたり暖かくしたりしていても治りません。
人の風邪薬を飲ませるのもNG。主成分のアセトアミノフェンを猫が口にすると中毒を起こして危険です。余った薬やもらった薬は症状に合わない場合もあるので避けること。特に抗生剤の乱用は耐性菌が生まれる危険があります。必ず動物病院の処方薬を与えましょう。

猫のくしゃみの原因は、大きく分けて「生理現象」と「病気(感染症と感染症以外)」です。それぞれの特徴を確認しておきましょう。

猫のくしゃみの原因は大きく分けて2種類

猫のくしゃみの原因は、大きく分けて「生理現象」と「病気(感染症と感染症以外)」に分けられます。それぞれの特徴を確認していきましょう。

猫の生理現象のくしゃみ

生理現象のくしゃみは、病気ではなく鼻の粘膜が刺激されて出るタイプです。たとえばほこりや猫砂が鼻の穴に入ったときに、ムズムズして「ハクション!」となります。室内と屋外の温度差が大きい冬は、窓やドアを開けた拍子に入った寒気に刺激されることも。これらは人間のくしゃみと同じ現象です。

猫のくしゃみの原因
感染症と非感染症(感染症以外)の病気とは

くしゃみの原因:感染症の病気

くしゃみの原因となる病気の一つは、ウイルスや細菌が鼻の粘膜について炎症を起こす「感染症」です。

ヘルペスウイルス感染症

ヘルペスウイルスが目や鼻の粘膜に感染して、結膜炎とくしゃみや鼻水の症状が起きます。鼻が詰まって食べ物のにおいがわからなくなると食欲が落ちてしまい、特に生後半年未満の子猫は重症化すると熱を出して肺炎で亡くなる危険もあります。
くしゃみで他の猫にうつる(飛沫感染する)ので、多頭飼育の場合は症状のある猫を隔離すること。1匹で完全室内飼育をしている場合も、ベランダに来る外猫から感染する可能性があるので油断はできません。

猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルスは、くしゃみや鼻水よりも口内炎や歯肉炎の症状が重く出ます。
感染力がノロウイルスと同じくらい強く、他の猫を触った飼い主さんの手を介してうつることもあります。

細菌単独の感染症

細菌単独の感染症の症状はくしゃみと鼻水のみで、目には異変が現れないのが特徴です。
ただし、ヘルペスウイルス感染症で粘膜が荒れた部分に細菌の二次感染が起きると、ねばりのある黄色や緑色の鼻水が出て鼻が詰まり、重症化しやすくなります。

感染症にかかりやすい猫種

ペルシャは鼻の粘膜の免疫がやや弱く、ウイルスや細菌の感染症を発症しやすい傾向があります。鼻腔にカビが生えることもあるので要注意です。
短頭種のスコティッシュフォールドは鼻腔が狭いため、呼吸のたびに粘膜が刺激を受け、くしゃみ、鼻水、鼻血が出やすいのが特徴です。感染症のリスクが高いとまでは言い切れませんが、病気のサインを見逃さないようにしましょう。呼吸がつらそうであれば、ネブライザーで鼻水のねばりをとる治療を行います。程度によっては鼻の穴を広げたり鼻の奥の通りをよくしたりする手術が必要になるかもしれません。

くしゃみの原因:非感染症(感染症以外)の病気

ウイルスや細菌による感染症以外の病気でくしゃみが出ることもあります。鼻の問題と思いがちですが、口や血圧が関係することもあることを知っておきましょう。

アレルギー性鼻炎

ウイルスや細菌による感染症以外の病気でくしゃみが出ることもあります。鼻の問題と思いがちですが、口や血圧が関係することもあることを知っておきましょう。

腫瘍(リンパ腫)

鼻の中にできた腫瘍(リンパ腫)がくしゃみの原因になることもあります。最初は片方の鼻の穴から透明やピンク色の鼻水が出たり出血し、腫瘍が穴の境目(鼻中隔)を溶かすと両方の鼻から出るように。主に7歳以上に見られる病気です。

歯周病

歯根が深い犬歯(牙)が炎症を起こして歯周病になると、鼻の粘膜まで波及することがあります。7歳以上は要注意です。

高血圧

11歳以上になると高血圧で鼻から微出血することがあり、それに鼻の粘膜が刺激されてくしゃみをすることもあります。

ワクチン接種と定期検診で
病気を予防する

くしゃみの症状が現れる病気の中でも、感染症は混合ワクチンの接種で予防できます。混合ワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」で構成されます。
コアワクチンは猫がかかりやすいヘルペスウイルス感染症と猫カリシウイルス感染症に加え、猫パルボウイルス感染症も予防ができるのがポイント。完全室内飼育の猫でも定期的に接種することが重要です。
ノンコアワクチンは猫白血病ウイルス感染症など。屋外に出る猫や環境にリスクがある猫が接種するべきとされています。
動物病院と相談して3種混合(コアワクチン)、もしくは4種・5種混合(コアワクチン+ノンコアワクチン)を定期的に接種しましょう。

猫のくしゃみは病気のサインと考えましょう。様子を見ていて治るくしゃみはほとんどないので、動物病院を早めに受診すること。
後編では受診の方法や健康チェックの方法を紹介します。
猫のくしゃみ<後編> 〜猫のストレスを減らす受診の方法〜

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