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ペットフードのパッケージ表記の見方

ペットフードのパッケージ表記には「ペットフード安全法」と、
ペットフード業界による消費者が適切な商品を選べるように公正な情報が提供されているかを定めた
「ペットフードの表示に関する公正競争規約」というルールがあります。パッケージには、
それらのルールに則った記載がされていますので、製品を選ぶ際の参考として説明してみたいと思います。

監修迫田 順哉
(ユニ・チャーム株式会社)

ペットケア開発本部マネージャー
日本ペット栄養学会 編集委員。ペットフード協会 技術委員会 作業部会 安全性部会を経て、栄養基準研究会メンバー。犬猫のペットフードの設計や開発活動を行いながら、学会誌への解説記事の投稿やペット栄養管理士講義等の学術啓蒙活動を行っている。代表的な登録特許に猫の吐き戻し軽減技術などがある。

迫田順哉. 2017. ペットフードの栄養設計や使用における安全. ペット栄養学会誌, 20: 156-162.

https://doi.org/10.11266/jpan.20.2_156

INDEX

ペットフードのパッケージで見るべき表示9項目

ペットフードのパッケージには「ペットフード安全法」による法律に定められた表示と、ペットフード業界全体でペットフード公正取引協議会によって定めている規定「ペットフードの表示に関する公正競争規約」によって定められた2つの表示があります。

「ペットフードの表示に関する公正競争規約」の必要表示規定の項目

出典:ペットフードの表示に関する公正競争規約(公正取引委員会・消費者庁 平成28年11月22日認定)

表示項目 タイプ
①ペットフードの名称
②原材料名
③原産国名
④事業者名及び住所
⑤賞味期限
ペットフード安全法の「表示の基準」と同じ。
⑥成分
⑦ペットフードの目的
⑧内容量
⑨給与方法
ペットフードの表示に関する公正競争規約に基づいて加わった表示。

ペットフードの表示に関する公正競争規約では、「ペットフード安全法」で定められた5項目に⑥〜⑨の4項目が加わった9項目が表示の規定ルールになっています。

まずは、製品の特長をパッケージから読み取ろう

ブランド名

まずパッケージを見て飛び込んでくるのは、ワンちゃんやネコちゃんの写真やフードの写真とブランド名だと思います。例えば、「銀のスプーン」「グラン・デリ」「ベストバランス」といったネーミングです。同じメーカーの中にもいくつかのブランド名がありますが、これはその製品群ごとに製品思想が異なるため使い分けています。メーカー側はこのブランド名やパッケージのデザインなどから、その製品の特長を伝えます。

銀のスプーン ~おいしい、だから幸せ~ ベストバランス ※2018年6月時点「銀のスプーン」「ベストバランス」のロゴ

味付けや特長

フレーバーや味付け、食感などの説明書きもよく見られます。うちの子がどのようなタイプを好きかが分かっていれば、これも参考になるかと思います。味付けは製品によって異なるため、食べない場合にはいろいろな製品を試してみる価値があります。銘柄を変更する際には、いきなり全て変更するのではなく普段食べているフードに混ぜる割合を徐々に増やして1週間以上かけて、体調や便の状態を見ながら切り替えていきましょう。
 また健康面も「ビタミン・ミネラルを調整」「お腹の健康維持に配慮」のような文言で記載されていることも多いです。特にパッケージの表面には、その製品が最も力を入れている特長が記載されていることが多いため参考になるかと思います。

「原産国」と「原材料」表記の決まりごと

原産国

最終加工工程を完了した国が記載されています。ここで言う最終加工工程とは、実質的に変化を与えた加工作業のことで具体的には加熱調理加工などを指します。単に混合しただけ、ラベルを貼っただけ、詰め替えただけは最終加工工程にはなりません。また、日本製造の製品は「国産」とも表示できることになっています[2]

原材料

使用したすべての原材料を添加物以外の原材料と添加物に分けて、添加物以外の原材料、添加物の順に表示することが2016年の公正競争規約によって定められています[2]。例えば、図1は銀のスプーンの原材料表記ですが、「穀類~酵母エキス」までが添加物以外の原材料、「ミネラル類~ハーブエキス」までが添加物となります。また、原材料は通常は配合量の多い順に記載されています。添加物が気になる方は、原材料表記を確認すればどのような物が使用されているか分かります。原材料の順番や名前だけではその製品の良し悪しを判断する良い材料にはなりません。ペットフードを設計する際にはまず栄養設計やその製品のコンセプトがあり、その手段として原材料が選定されており重要なのは原材料の組み合わせによる栄養素の組成です。

「ペットフードの表示に
関する公正競争規約」による
4つの表示を見てみよう

ペットフードの目的

ペットフードの表示に関する公正競争規約では、「総合栄養食」、「間食」、「療法食」、「その他の目的食」と、規約施行規則に従いペットフードの目的を表示することになっています。「間食」、「療法食」、「その他の目的食」は、代えて以下のように表示することもできます。

分類名 代用できる表示
間食 「おやつ」、「スナック」または間食であることが分かる表示
療法食 「特別療法食」「食事療法食」または「食餌療法食」
その他の目的食 「一般食(おかずタイプ)」、「一般食(総合栄養食と一緒に与えてください。)」、「栄養補完食」、「カロリー補給食」、「副食」、「サプリメント」など

また、ブランド名とセットで「〇〇用」などの対象が記載されている製品も増えてきました。例えば、「15歳以上用」といった年齢別、「トイ・プードル用」といった犬種別、「吐き戻し軽減」といった対象別です。これを見れば、うちの子により適した物がどの製品かが分かります。
この際、主食を選ぶ場合には総合栄養食かどうかの確認をしましょう。特にウェットフードでは、総合栄養食では無い物も非常に多いので注意が必要です。ドライフードでも必ずしも総合栄養食とは限らないため、表示を確認しましょう。また、療法食を一般のお店で購入すること自体は現状問題ありませんが、これらはワンちゃんネコちゃんの状態を診断した上で適したものを選ぶ必要があり誤った使用による健康被害も報告されていますので[1]、必ず獣医師の指導のもとで使用するようにしましょう。

内容量

内容量の記載もペットフードの表示に関する公正競争規約によって義務付けられています[2]。また、小分けタイプかどうかの説明書きもされている場合があります。

給与量

給与量も表記されています[2]。必要カロリーの算出方法に関しては、2017年時点では複数存在しており自社独自の設定方法を持っているメーカーもあるため目安と考えるのが良いかと思います。必要カロリーは実際のところ、個体差、季節性、環境、運動量など様々な要因の影響を強く受けます。このため、ボディコンディションスコアや体重の増減を把握して給与量を調整するのが良いかと思います。

保証栄養分析値

タンパク質・脂質は「~%以上」、粗繊維・灰分・水分は「~%以下」と表示されます。このうち粗繊維と灰分は食物繊維量やミネラル量を推定するにはあまり使えず、これらは主にカロリーを算出する際に用いられます。メーカーでは製品ごとに思想を持っており、それに合わせて設計値を設けています。「粗」という言葉は、質が悪いという意味ではありません。英語で「crude」と書きますが、これは分析方法に由来する書き方で「食物繊維」と「粗繊維」とでは異なる数値が出てきます。このため、繊維量に対してより厳密な設計値を持っている製品、例えばネコ用の毛玉ケア製品などにおいては食物繊維の量も記載されている場合があります。上記以外にも、例えばナトリウム、リン、ビタミン類といった注目されやすい栄養素やその製品の特長となる栄養素が記載されていることがあります。どの栄養素も多ければ多い程良い、少なければ少ない程良いと言い切ることは難しいですが、その製品が少なくとも表記している栄養素はその設計を重視していることを示しています。「保証栄養分析値」と書かれている場合は、その量を賞味期限内で保証していることを示します。

例えば図2は2018年の銀のスプーンの保証分析値表記ですが、ビタミンAが10000IU/kg以上と表記されている場合は賞味期限ギリギリでも10000IU/kg含んでいることを示し、実際に店頭に並んでいる多くの製品において製造段階では1.5~2.0倍程度は配合されています。また「代表的な分析値」は実際に製品を分析した例を示します。「設計値」のようにその製品の設計を示している場合もあります。

例として、図3で2018年の「銀のスプーン 全成長段階用」と「銀のスプーン 15歳が近づく頃から」の代表分析値を比較してみましょう。15歳製品は全成長段階用に対してリンを低減し、カルシウムとリンのバランスを調整するためにカルシウム量も低減、高齢猫の健康維持に配慮してビタミン類を調整していることなどが分かります。

フード選びに迷ったら、パッケージの情報も判断材料に役立てよう

上記以外にも、裏面や側面などをよく読んでみると保管方法、与え方、食事以外で気をつけること、そのフードの詳しい製品特長などが書かれている場合もあります。特に保管方法は、種類によっては開封後にカビや細菌が増えやすい物もありますので確認するようにしましょう。
多くの飼い主さんが一度はフード選びに迷ったことがあると思います。新たな製品を手にする際に、パッケージの表示を確認してペットに合うものを選べるように役立ててもらえたらと思います。

【参考文献】

  1. [1]公益社団法人日本獣医師会. 2013. 療法食の適正使用に向けた課題と対応.
  2. [2]ペットフード公正取引協議会. 2016. ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則解説書.