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食欲が落ちやすい
夏のフード対策<前編>

夏の暑い時期、「いつものように食べてくれない」「ちょっと食べて残してしまう」など、
ワンちゃんネコちゃんも夏バテによって食欲が落ちることがあります。
そんな食欲が落ちやすい時期のフード対策を前編・後編で紹介します。

監修迫田 順哉
(ユニ・チャーム株式会社)

ペットケア開発本部マネージャー
日本ペット栄養学会 編集委員。ペットフード協会 技術委員会 作業部会 安全性部会を経て、栄養基準研究会メンバー。犬猫のペットフードの設計や開発活動を行いながら、学会誌への解説記事の投稿やペット栄養管理士講義等の学術啓蒙活動を行っている。代表的な登録特許に猫の吐き戻し軽減技術などがある。

INDEX

夏はワンちゃんネコちゃんも
食欲が落ちやすい

夏の暑い時期、食欲が湧かずぐったりしてしまう夏バテが人にもあるように、犬や猫も夏バテを起こすことがあります。季節によって必要なカロリーが変化することはイヌの研究で報告[1]されており、夏よりも冬の方が必要なカロリー量が多いとされています。夏は痩せて冬は太る傾向があるように感じられるのは、夏は食欲が落ち冬は運動量が低下している可能性が考えられます。ワンちゃんネコちゃんの食欲の低下に気づいてあげるためには日頃からよく観察することが大切です。夏バテで食欲が落ちてしまった時は、フードの与え方に工夫をすることで食べてくれるかもしれません。ただし、1~2日何も食べないようでしたら何らかの病気である可能性があるため早めに獣医師に診てもらいましょう。

夏バテ中の食事の与え方を
工夫してみよう

暑い日のワンちゃんネコちゃんの食欲不振に気づいたら、まず試してほしい方法は、涼しい場所で与えてみることです。夏バテによる食欲不振の場合、涼しい場所や時間であれば食欲が回復することがあります。その時に与える食事は、日頃から食べている総合栄養食にしましょう。夏バテで食欲がないからといって、何か別の製品に変えてみるなどの急な食事内容の変更は下痢や軟便を引き起こす可能性があります。もし別のフードを試したい場合は、1週間以上かけて普段食べているフードに混ぜ、体調や便の状態を見ながら増やしていく与え方が良いでしょう。1日に1割程度ずつ、徐々に新しいフードの割合を増やし10日程度で切り替える方法が分かりやすいです。

[フードの切り替え方法]1日目:今まで与えていたフードに新しい種類のフードを1割程度混ぜる 5~6日目:新しい種類のフードを5割程度に増やす 10日目:切替完了!

トッピングで味と水分補給にひと工夫

いつもの食事にトッピングをプラスするのも有効な方法です。
トッピングするものには、ウェットフード、ソフトドライフード、オヤツ、人用の食材などがありますが、心がけたいポイントは主食となる総合栄養食をきちんと食べてもらうことです。

ワンちゃんの場合

ワンちゃんは、水分含量の多いものを好むことが多いため、ウェットフードやソフトドライフードのトッピングは気に入ってもらいやすいでしょう。特に、選り分けて食べてしまう器用な子は主食となる総合栄養食と混ぜやすいウェットフードが使いやすいかもしれません。ドライフードを水でふやかすだけでも有効な場合もあります。また夏バテ時、氷を与えると喜ぶワンちゃんは多いと思いますが、冷たいものを与えすぎてお腹を冷やしてしまうと消化能力が低下してしまう可能性があるので注意が必要です。

ネコちゃんの場合

ネコちゃんは、中程度の水分量を好まない子が多くドライフードにウェットフードを混ぜると口をつけなくなることがあります。こういった時はドライタイプのオヤツやグルメタイプのフードのトッピングを試してみると良いでしょう。数粒ずつ食べる子も多いので主食となる総合栄養食を残してしまうようであれば、ペット用ふりかけなどを主食となるドライフードに均等に絡むように味付けをしてあげるのもおすすめです。

その他には、ペット用のスープやミルクなど液体タイプのものと併用する方法も水分摂取として有効でしょう。しかし、人用の飲料やスープは塩分などによるミネラル摂取過多や、人には問題がないスパイスや甘味料でも犬猫にとっては安全性が疑われる成分を含んでいる場合があるためおすすめできません。

大切なのは必要な栄養素を
しっかり摂ってもらうこと

夏バテ中でも美味しいオヤツなら喜んで食べてくれる場合があります。食べてくれるからと与え続けていると、美味しい間食の味を覚えたワンちゃんネコちゃんたちが、主食となる総合栄養食をますます食べなくなってしまい、必要な栄養素を充分に摂取できなくなってしまいます。美味しいグルメフードの中には総合栄養食の製品もあるので、そういった商品を選んでトッピングや間食として与えるというのもひとつの手です。また、夏場だけ総合栄養食タイプのウェットフードの割合を増やすという手段もありますが、ウェットフードの75%程度は水分であり、カロリー密度がとても低いため必要カロリー量を食べきれない事も多いので注意が必要です。
ライフステージに沿って必要な栄養素を摂取できるような工夫を心がけましょう。

【参考文献】

  1. [1]Ohshima, S., Y. Fukuma, M. Funaba and M. Abe. 2001. Metabolizable Energy Required for Maintenance of Adult Beagles: Assessment as a Function of Ambient Temperature. J. Pet. Anim. Nutr. 4:70-77.