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犬のトイレのしつけ
お悩み別アドバイス

愛犬のトイレのしつけがうまくいかない人はもちろん、ときどき失敗した跡を見つけてしまう、
トイレシートからなぜかハミ出てしまう…といったお悩みを持つ飼い主さんは多いもの。
犬のトイレのしつけ 失敗する理由と成功のコツ」に続き、特に多い失敗のお悩みについて
JAHA認定家庭犬しつけインストラクターの矢崎潤さんにアドバイスしていただきました。

お話を伺った方矢崎 潤さん
(JAHA認定家庭犬しつけインストラクター)

公益社団法人 JAHA(日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター 同協会インストラクター養成講座委員会アドバイザー/公益社団法人 日本愛玩動物協会講師/日本獣医生命科学大学 非常勤講師/帝京科学大学 非常勤講師
「ほめるしつけ」がポリシー。犬の行動学と学習理論、動物福祉に基づくトレーニングスタイルは、わかりやすく、安全かつ効果的と多くの信頼を得ており、環境省をはじめ、動物行政関係者向けの研修会の講師、民間愛護団体でのセミナー等でも指導を続けている。著書に「幸せな子犬の育て方」大泉書店、「犬のしつけきちんとブック」シリーズ(トイレ、吠え、留守番、咬みグセ)高橋書店などがある。

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

改善のコツは愛犬の排泄記録を取ること

犬のトイレの失敗には、必ず何か原因があるものです。その原因がわかれば改善に1歩進むことができます。愛犬のトイレにまつわる困りごとがあるならば、まずは愛犬の排泄記録を始めましょう。メモするポイントは、以下の5項目です。
①いつ
②どこで
③誰が何をしているとき/したとき
④どんなトイレの失敗
⑤飼い主さんが対処したこと/そのときの犬のようす

2019年◎月◎日(日) ✓朝 昼 夜 ○成功 ×失敗 いつ 7:00頃 どこで キッチン横のフローリング 誰が何をして ママが人間の朝食の準備中 犬がどんな失敗を トイレシートを置いてない場所でオシッコの粗相 対処したこと(犬の状態) 大きな声を出してしまったあと、慌てて拭き取った。(犬はしっぽを振っていた。拭き取ってる間じゃれてきた。)

まずは7日間つづけてみてください。
7日分の記録を整理してみると、失敗した日の項目の共通点を見つけることができるはずです。こうすることで、どんなときにトイレの失敗をしてしまうのか原因を見つけやすく改善の方法も考えやすくなります。例えば、上記の見本例のような場合、朝の忙しい時間に限ってトイレの失敗が続いているのなら、あらかじめその時間にトイレサークルに入れておくなどで、習慣化していたトイレの失敗を防ぐごとにつながります。
また、「⑤飼い主さんが対処したこと/そのときの犬のようす」も失敗の原因を見つける際に重要なポイントになります。

失敗したとき、こんな対処していませんか?

  • 大声で反応してしまう
  • 怒鳴る
  • 叩くなどの体罰を与えている
  • 犬の鼻先を粗相したところに押しつけて叱る
  • 押さえつけて目をじっと見つめて叱る
  • 犬を捕まえようと追いかける
  • 拭き取る雑巾などをじゃれさせたまま粗相の後片付けをしている

排泄記録の飼い主さんが対処した項目に上記のいずれかがある場合、それらはすべて間違った方法です。叱ることは正しいトイレの場所を教えることにはなりません。体罰は絶対にだめです。犬に恐怖を与えるだけで、混乱し適切なトイレを覚えることを妨げます。また、叱られて怖い思いをした犬は、排泄自体を隠れてするようになったりして、トイレトレーニングがうまくいかなくなってしまいます。一方で、大声で反応したときや、後片付け中しっぽを振ってじゃれてくる場合には、失敗するたびにかまってもらえる、遊んでくれるんだなと勘違いして覚えてしまっている可能性も。
粗相を見つけた時は、騒がず、叱らず、バツを与えず、知らん顔で静かに片付けましょう。もし、じゃれることが心配であれば、サークルやケージに一旦犬を入れてから片付けましょう。

飼い主さんが決めた場所で
排泄してくれないお悩み

お悩み:トイレに連れて行っても排泄してくれない

トイレに連れて行っても排泄しない場合は、犬はその場所をトイレと認識していない可能性があります。犬にトイレを教えるためには、まずはその場所で排泄する経験が必要です。トイレシートを設置したトイレサークルに入れて10分程度待っても排泄しない場合は、一旦出してしばらくしてからもう一度トイレサークルに入れるなど、頻繁にトイレに連れて行くようにして、根気よくトイレで排泄できるチャンスを増やしてください。一度でもトイレで排泄できたら、たくさんほめて、スペシャルなごほうびを与えて、この場所で排泄するといいことがあったという体験を積み重ねていきましょう。

お悩み:サークルから出した途端、排泄する

サークル内に留守番中のオシッコや便の形跡がなく、飼い主さんが帰宅してサークルから出した途端、排泄をする場合は、犬がサークル内をトイレではなく寝床と考え、自分の排泄物で汚したくないと思っているかもしれません。その場合は、部屋の別の場所にトイレをもう一つ用意し、寝床とトイレをしっかりと分けてあげましょう。

お悩み:トイレの場所を覚えているはずなのに粗相する

日頃からトイレの場所での排泄が成功していて飼い主さんが「覚えている」と思っている場合も、ときどき粗相をするならば、実はまだトイレの場所をしっかり覚えられてないかもしれません。それなのに、「もうトイレを覚えたから、ほめたり、ごほうびをあげなくていい」と判断してしまうと、中途半端な認識のままでトレーニングが止まってしまいます。成功率100%が何日も続くようになるまでは、必ずほめて、ごほうびを与えましょう。また犬がしっかりトイレを覚えてからも、排泄を見かけたらほめることは続けるよう心がけましょう。

トイレの粗相のお悩み

お悩み:いつも同じ場所で粗相する

いつも同じ場所で粗相する場合は、その場所が犬にとって排泄がしやすく好みのトイレ環境と思っている可能性があります。可能ならば、そこに犬のトイレを移すことを検討してみてください。しかし、住宅事情でトイレの場所を移せないこともあります。その場合は、失敗を予防するために、匂いを残さないように徹底的に消臭し、そこにモノを置く、ゲートをつけるなど物理的に行けない工夫をしましょう。また他にも、玄関マットなどを敷いてあるスペースをトイレと間違える場合もあります。トイレの場所を覚えるまでは、トイレシートに似ている敷物やラグマットなどは外しておきましょう。

お悩み:目を放している間に粗相する

犬のトイレのしつけ 失敗する理由と成功のコツ』でも述べた通り、トイレを失敗させないためには、「監視」と「管理」が大切です。目を離す時は、サークルかケージを利用した管理を行うのがよいのですが、長時間の入れっぱなしは犬のためによくありません。特にお留守番が長い犬にとっては、人間とのコミュニケーションをとる時間が限られているので、家族がのんびりできる時間は、なるべく人のそばで過ごさせてあげましょう。同じ部屋にいても飼い主さんが他に意識が向いたときに粗相をしてしまう場合、小型犬であればスリングの活用や抱っこによるトイレの失敗をさせない管理もおすすめです。排泄記録を見返して、飼い主さんがテレビやスマートフォンを見ている時に粗相をすることが多いのなら、この方法を試してみてください。

お悩み:部屋中のあちこちで排泄する

部屋中のあちこちで排泄をしてしまう場合、対策として、排泄しそうなところ全域にトイレシートを敷いておく方法もあります。これにより、まずはトイレシートの上に排泄する経験をつけましょう。また、お留守番が多く、飼い主さんが監視できない状態なら、愛犬の居場所となるサークル全体にトイレシーツを敷き詰め、その上にトイレトレーを設置してトイレシート以外での排泄を減らしましょう。
また、オス犬ならマーキングという可能性もあります。マーキングは体が成長してくると始まる本能的な行動ですが、去勢や避妊手術をすることで緩和される報告もあります。繁殖の予定がなければ、さまざまな病気のの予防にもなるので検討してみましょう。マーキングの場合、マーキングをしても良い場所を作りその欲求を満たす環境を用意してあげましょう。たとえば、サークルで囲んだトイレの真ん中に、倒れないよう水を入れた2Lのペットボトルをトイレシートで包んでマーキングポールにするのはいかがでしょう?サークルの柵にもトイレシートをクリップで挟んで垂らしておくと、外に飛び散る心配もありせん。それ以外の場所は、マーキングできないようにガードしておきましょう。

お悩み:惜しい!トイレシートからハミ出しがある

「ちゃんと自分でトイレまで行くのに、いつも少しハミだしちゃう」という場合は、前足はシートの上にあっても、後ろ足やお尻がシートから出ている可能性があります。まずは、犬のカラダの大きさに合ったサイズなのかを確認しましょう。また床に薄いシートだけを敷いた場合では、境目がわかりにくく、ハミ出しやすくなります。ハミ出しがある場合は、トイレトレーなどを使用して境目を意識しやすくしておきましょう。そして、ハミ出さず排泄した時だけ、ほめてごほうびを与えるようにしましょう。

愛犬をトイレ上手にすれば一生ラクに

愛犬のトイレトレーニングがうまくいかない場合は、もう一度排泄記録を取ってみましょう。数日間続けてから見返すと、以前とは異なる新たな原因や、習慣化してしまっていたことに気づくことができるでしょう。対策を行う場合も、その結果をきちんとメモして、トイレでの成功率100パーセントを目指して頑張りましょう。
トイレトレーニングは、犬を迎えたその日からがスタートです。できれば、犬を迎えた数日間は、家族で相談しながら誰かひとりは家にいるようにして、集中的にトイレトレーニングするのが理想です。ひとり暮らしや仕事などで平日に時間がとれない場合は、土日や連休などに合わせて一日中見ていられる日をつくって、その期間集中してトレーニングをするのもよいでしょう。これから一緒に暮らす時間を考えれば、トイレトレーニングに取り組む数日〜数週間はほんのわずかな期間です。早めに集中して取り組めば、お互いにとって快適に過ごすことができて、一緒にお出かけできる場所も広がっていくことでしょう。

ただし、成犬になってからの排泄の失敗は、さまざまな理由やそうなるまでの経緯がワンちゃんごとに異なり、きちんと専門家のカウンセリングを受けて、その子の失敗の理由に合った方法で改善することをおススメします。また、頻繁な粗相は健康面が理由の場合もあるので、異変を感じたら獣医師への相談も必要です。そういった際にも、日頃の排泄記録が役に立つのでメモを残しておきましょう。