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犬の吠える理由 Vol.2
~吠える原因がわかれば予防もできる~

犬は吠えやすい動物です。
そんな犬と一緒に快適に暮らすには、飼い主さんが愛犬の吠えを上手にコントロールすることが鍵になります。
そのためには、吠える原因をみつけて、環境や行動を管理し予防するマネジメントが大切です。
そんな「犬の吠えの予防法」について、JAHA認定家庭犬しつけインストラクターの矢崎潤さんにお話を伺いました。

お話を伺った方矢崎 潤さん
(JAHA認定家庭犬しつけインストラクター)

公益社団法人 JAHA(日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター 同協会インストラクター養成講座委員会アドバイザー/公益社団法人 日本愛玩動物協会講師/日本獣医生命科学大学 非常勤講師/帝京科学大学 非常勤講師
「ほめるしつけ」がポリシー。犬の行動学と学習理論、動物福祉に基づくトレーニングスタイルは、わかりやすく、安全かつ効果的と多くの信頼を得ており、環境省をはじめ、動物行政関係者向けの研修会の講師、民間愛護団体でのセミナー等でも指導を続けている。著書に「幸せな子犬の育て方」大泉書店、「犬のしつけきちんとブック」シリーズ(トイレ、吠え、留守番、咬みグセ)高橋書店などがある。

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

吠えの対策は、
まず原因を突き止めること

やめさせたい、減らしたい愛犬の吠えがあれば、その原因を見つけて対策することが肝心です。「うちの子は、いつも吠えるの」とおっしゃる飼い主さんでも「24時間ずっと吠え続けているのですか?」と尋ねると大抵そうではなく、よく吠えるシチュエーションが複数あるだけなのです。まずは愛犬が吠えている時の5W1Hの①~⑤を書き出しましょう。

愛犬が吠えるシチュエーションの5W1H

①When:いつ吠える?
②Where:どこで吠える?
③What:何をしている時に吠える?
④Who:誰に(何に)対して吠える?
⑤How:どのような吠えなのか?
   ↓
⑥Why:なぜ吠えるのか?

①~⑤を書き出しただけで、⑥の原因に気がつく飼い主さんもいるはずです。
犬の吠える原因を探るには、吠えるシチュエーションを把握すること。レコーディングダイエットと同じように、状況を書き出して把握しただけでも解決策が見えてくることもあります。愛犬が吠えるシチュエーションがわかったら「⑥なぜ吠えるのか?」についても考えてみましょう。

あなたの犬のその吠えはどのタイプ?

同じようなシチュエーションであっても、吠える理由はひとつではありません。
たとえば、「(When)朝の散歩で、(Where)公園の前を(What)歩いている時に、(Who)公園にいる黒い犬に向かって(How)大きな声でワンワン吠える」とします。では、なぜ(Why)吠えるのでしょうか? 近づきたくない、追い払いたいという防守吠えや攻撃吠えの他、挨拶をしたい、遊びたいなど、要求吠え、歓喜・興奮吠えの可能性もあります。その違いは、犬のボディランゲージなどにも表れるので、吠える理由を考える参考にしてください。

吠えのタイプ 原因と特徴
警戒吠え いつもと違う、物音や匂い、人影などに警戒して吠える。または、飼い主にその状況を伝えるために吠える
要求吠え 飼い主などにかまってもらいたい、関心を向けてほしい、食べ物がほしい、抱っこしてほしい、ドアを開けてほしいなど、要求を意思表示するために吠える
防守吠え 自分の身を守ることをはじめ、テリトリーや食べ物、おもちゃ、飼い主さんなど大切なものを守るために吠える
攻撃吠え 気に入らない相手に対して、威嚇して追い払うためや、攻撃の前兆として吠える。恐怖から転じる場合もある
歓喜・興奮吠え 楽しい時、うれしい時に思わず気持ちが高ぶって吠える。また、何であれ、ちょっとした刺激に反応して興奮してしまい吠える場合もある。
ストレス発散吠え 運動不足、遊び不足、ひとりの時間が多くて退屈など、ストレス発散のために吠える

犬語がわからなくても、今怖がっているのか、楽しんでいるのか、平常心なのか3つのパターンぐらいのボディランゲージを読み取れるようになりましょう。注目してほしいのは、耳の位置と尻尾の位置。わかりにくい犬種もいますが、どこかに違いで出るはずなのでよく観察してください。怖い時は、垂れ耳でも後ろに引かれる感じになります。耳が前を向いて吠えているのなら、 緊張や警戒の可能性が高く、しっぽが上がる、下がる、立ち止まるなど、それが犬の感情の変化になるので、よく観察することが大事です。また、吠えている際のストレスのバロメーターのひとつとして、その犬の大好きなオヤツを与えてみると良いでしょう。吠えていても食べ物に気が向くのならストレスレベルが低く、吠えることに夢中で全く食べることができないのなら、かなり興奮していたり怖がっているなどのストレスレベルが高い状態で吠えていることがわかります。

原因別に吠えの予防方法を
考えよう

愛犬の吠えるきっかけがわかったら、なるべくその状況にならないように工夫することが予防になります。「朝の散歩で、公園の前を歩いている時に、公園にいる黒い犬に向かって大きな声でワンワン吠える」ことをやめさせたいのならば、下記のようなきっかけを作らないことが予防になります。

  • 朝の散歩のコースを変えてその公園の前を歩かない
  • 散歩の時間をずらす
  • 公園の前を通る時に、愛犬が黒い犬を見ないように、おもちゃやオヤツなどに注目させて通り過ぎる

吠える機会が増えれば、それだけ犬は吠えることが習慣化して、吠えグセがついてしまうので注意しましょう。

また、留守番中に吠えが習慣化する犬も多いのです。飼い主さんが退屈しのぎに外が見えていた方が良いだろうと思って、窓の外がよく見える場所にケージや犬のベッドを置くことがよくあるのですが、実はそれは、退屈な犬に吠えることを教えるようなものであったりします。もともと犬は、人の仕事を手伝うように作業意欲を高くしてありますから、ペットとして暮らしている犬のほとんどがやる気はあるけれど仕事がない状態です。そのため、室外の通行人や散歩中の犬を「吠えて追い払う」という仕事をすぐに見つけ、楽しむようになります。飼い主さんとしては退屈だろうと思って開けていたカーテンを閉めるだけでも、吠えの軽減につながるでしょう。

困った吠えグセには、
マネジメントと
イメージを変えるトレーニングを

困った吠えグセの対策には2つのアプローチがあります。まずやっておきたいのは、悪い習慣をリセットして、管理や予防を行うマネジメントです。「散歩のコースや時間を変える」「カーテンを閉める」ことをはじめ、「適量の散歩をする」などの犬のニーズを満たすことがこれにあたります。
「以前は大丈夫だったのに急に吠えるようになった」という飼い主さんが気付かない原因のひとつに、怖い体験が考えられます。飼い主さんにとっては、たいしたことでなくても、犬にとっては本当に怖くてたまらないことが多くあります。

たとえば、初めてのお散歩で、たくさんの人から「かわいい」と言われ、なでられたのが非常に怖かったとします。しかし、横の飼い主さんは、守ってくれず他人になでさせて喜んでいる…。それを数回体験したら、犬は飼い主さんには頼れない自分でなんとかしなくちゃいけないと思うようになります。そこで、意を決して吠えたら、怖い手が引っ込んだ。そんな経験から、自分の身を守るには吠えなきゃいけないと思い、今まで吠えなかった犬が、ちょっと怖いことがあると、吠えるようになってしまいます。こんな時は、犬が怖がっていることに気づいてあげ、吠えのきっかけとなっている“他人の手”を飼い主さんが避けてあげるマネジメントを行いましょう。

2つ目は、吠えずに過ごせるようにするトレーニングです。トレーニングは、手間も時間もかかるため、飼い主さんの根気が必要になりますが、その後にはお互いに快適な生活になるはずです。基本的に、吠える原因の印象を「うれしいこと」「楽しいこと」などとセットにし、イメージを変えるようにして、徐々に慣れさせるのが良いトレーニングになります。怖くて吠える犬の場合も、時間をかけて、ゆっくりと慣らすトレーニングを行うのがオススメです。