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犬の暑さ対策

夏真っ盛り。夏になると気温の上昇はもちろん、湿度も高く健康面で注意することが増えてきます。
熱中症や夏バテ、さらに外へ出られる時間帯が減り運動不足にもなりがちに…。
熱中症を予防しながら快適に夏を乗り切る暑さ対策についてご紹介します。

監修の先生内田 恵子 獣医師
(元ACプラザ苅谷動物病院統括院長)

小動物臨床に35年間従事した後、現在は動物病院運営のためのアドバイスを開始している。JAHA内科認定医、JAHA認定パピーケアスタッフであり、動物病院で動物の入院中ストレスや診察中ストレスを軽減し、病院で問題行動を作らないような技量を広めるため活動中。

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

熱中症は屋外でも屋内でも起きる

気温と湿度が高い環境下でなりやすいのが熱中症。
夏の暑さのピークは8月ですが、ペットの熱中症は、ペット自身が暑さに慣れていない時期の夏日が始まる5月・6月ごろから増え始め、6月から7月にかけて発生件数が約3倍に跳ね上がり、さらに、2014年にアニコム損保が契約者へ実施したインタビュー結果によると、「このぐらいの室温なら大丈夫だろう」という油断からか、屋内での発生件数が屋外を上回るデータ結果がでています。
人間の場合は、身体全体から汗を出すことで体温調節をするのですが、犬の場合は、人のように流れるような汗はかきません。主に肉球と鼻先以外では汗を出さず(※)、「ハァハァ」と荒い息をするパンティングで体温調節をします。しかし、パンティングでは追いつかないほどの高温状態が続いてしまうと熱中症を引き起こすこともあります。

[熱中症の発生件数]※アニコム損保の熱中症に関連する保険金請求件数(2013年3月~2014年2月までの診療月別受付事故数) 6月:100件→7月:269件 6月から7月にかけて約3倍に! [発生場所]※【事故発生の状況結果】2014年にアニコム損保契約者へ実施したインタビュー結果より抜粋 自宅:67% 屋外:33% 出典:アニコム損害保険株式会社「STOP熱中症新聞」より

犬は体温が40度を超えた時点で熱中症と診断されますが、もともと体温が人間よりも高く、体温調節が苦手なため、熱中症になりやすいのです。
ワンちゃんのパンティングが止まらない状態を見かけたら、熱中症になりかけている可能性があります。すぐに体を冷やすなど対策をとりましょう。鼻ペチャの短頭種、太り気味、普段から興奮しやすいタイプのワンちゃんは、特に体温調節が苦手なので注意してください。

  • この記事では体温調節をするために汗を出すエクリン汗腺のある代表的な部位を述べています。個体、環境、健康状態によって、肉球や鼻以外の部位から汗を出すことはあります。

屋内での暑さ対策

屋内で一緒に過ごしているとき、人間が「ちょっと暑いな」と思う室温なら、ワンちゃんのためにもエアコンをつけておきましょう。ただし、エアコンをつけている部屋にずっといるのに、元気がない、食欲がないといった夏バテの症状が出るワンちゃんもいます。冷え過ぎも体調不良の原因になるので注意が必要です。

ワンちゃんにとって快適なお部屋にするには、エアコンの冷気が直接体に当たらないようにして、サーキュレーターなどで部屋の空気を巡回させるのがオススメです。冷たい空気は下がるので、低い位置にいることが多いワンちゃんとって、冷え過ぎ防止にもなり、冷気を巡回してくれるので電気代の節約にも。そして、ワンちゃん用のベッドも、体との間の空間温度や湿度が上昇しやすいので、心地よく眠れるようにムレにくく通気性の高いベッドを利用すると良いでしょう。また、太陽の当たる窓際近くは高温になることが多いので、遮熱・遮光カーテンなどで温度の上昇を防ぎましょう。さらに水分不足も夏バテなど体調不良の原因になるので、常に水が飲めるようにセットしておくことも大事です。

お留守番の時はエアコン必須。さらにワンちゃんの居場所を工夫しましょう!

ペットの生活環境は、その地域や家の構造などによっても違います。
周りに緑が多く、それほど高温にならない地域なら、風通しを良くしておくだけでも対策になります。しかしヒートアイランド現象が起きている都市部では、猛暑日と熱帯夜が続くこともあり、そんな地域は、ペットに留守番させる時もエアコンは必要だと考えてください。

ワンちゃんがフリーで過ごしている場合は、快適な場所を選べるようにエアコンがオンの部屋とオフの空間を行き来できるようにしておくとよいでしょう。ただし、人感センサー搭載のエアコンによっては、犬を感知せず、留守番中に冷房がオフになる恐れがあります。実際に熱中症になったワンちゃんもいるので、犬だけの状態で作動するか確認をしておきましょう。さらにもしもの停電の時を考えて、水入りのペットボトルを凍らせた氷柱やひんやりマットなどのコーナーを設けておくと安心です。サークルやケージの場合は、お部屋の空気を循環させ、冷え過ぎの時に自由に入れるクレートと、暑い時に涼める氷柱やひんやりマットなどの両方のコーナーをサークル内に設けるのがオススメです。もちろん、水も多めに用意して出かけましょう。

夏のお散歩は愛犬の体感温度に
注意してタイミングを見極めよう。

夏のお散歩も地域差があり、その環境によって行ける時間帯が違ってきますが、天気予報の最高気温は、地上から1.25~2.0mの高さで風通しが良く、直射日光が当たらない状態で観測された気温です。直射日光が当たるアスファルトの上は、夏場60度以上になることもあり、地面に近い高さで歩き、地表からの熱をそのまま受けてしまうワンちゃんにはとても危険な熱さです。さらに、その上を裸足で歩いている状態なので肉球を火傷することもあります。アニコムSTOP熱中症プロジェクトによる、天然芝とアスファルトの犬の体感温度の測定によると、暑さのピークをむかえる14時では、アスファルトでは44.5℃、天然芝の日陰では29.3℃と15.2℃の差が出ています。体感温度44.5℃は、浴槽のお湯としても熱すぎる温度です。

[天然芝(日なた/日陰)・アスファルト別の体感温度の測定グラフ]※測定場所:アニコパークドックランおよび西新宿路面 ※測定方法:10時、12時、14時、18時のそれぞれ、ワンちゃんの高さ(地面から10cmの高さ)で気温を測定 14時には、アスファルトでは44.5℃、天然芝(日陰)では29.3℃に達します。一番暑い時間なので、肉球のやけどにも注意が必要です! 出典:アニコム損害保険株式会社「STOP熱中症新聞」より

出発する前に手でアスファルトを触って確かめるなど、愛犬の体感温度に注意をして、気温が上昇する前の早めの時間帯に行くなど、飼い主の判断がとても重要です。

保冷剤入りのバンダナ、クールウェア、ミスト、トレイ付給水ボトル

お散歩コースは、できるだけ風通しの良い日陰の草地を選び、ワンちゃんの首に保冷剤入りのバンダナをつけたり、クールウェアを着せたり、ミストをスプレーしたりといった工夫をしましょう。もちろんお水も持参してこまめに水分補給ができるようにしておくことも大切です。また、真夏の雨あがりは高温多湿になりやすく、夜のお散歩へ出る場合も人間の背の高さで涼しく感じても、アスファルトはまだまだ冷えていないことがあります。出発する前にワンちゃんの体高の温度や湿度を確認してから出発しましょう。

愛犬と快適に夏を乗り越えましょう!

暑い季節は、外に連れ出す時間が少なくなり運動不足になりがちです。おうちの中で、ミニアジリティのような室内遊びを飼い主さんといっしょに楽しむのも良いでしょう。ただし、エアコンが効いている環境でも運動すると体温が上昇します。こまめに給水と休憩をとることを忘れずに。また、被毛に抜け毛や毛玉があると、熱がこもりやすいので、日頃からブラッシングで取り除くことも大切です。
外飼いのワンちゃんの場合は、風通しが良く常に日影になる場所に犬舎を設置しましょう。日陰にならない場合は、よしずなどで日光を避ける工夫をしてください。もちろん、熱風が出るクーラーの室外機近くは避けましょう。そして、クールマットや氷のブロックを入れたお水を複数用意するなどの対策をとっておくのが安心です。
屋外の場合も、屋内の場合も、ワンちゃんが過ごす地面や床の温度を飼い主さんが肌で確かめて必要な対策をすることが大切です。