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トイレの失敗や階段への躊躇など
生活行動に表れる犬の老化のサイン

今までなかったトイレの失敗や、階段への躊躇…。実はこれも、老化のサインです。
まだ動けるとワンちゃん自身が思っているシニアの初期はケガに注意。
愛犬の老化に合わせて環境を整えるのも飼い主さんの役目です。

お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。

INDEX

愛犬の日常生活での
行動の変化をチェック
してみよう

最近、日常生活での行動の失敗が増えてきた。これも歳のせい?

老化が進むと日常生活での行動に変化が出てきます。今まで出来ていた行動ができなくなるのは老化のサイン。まずは、下記のチェックリストを見て、心当たりがないか確認してみましょう。

日常生活での行動の変化チェックリスト

  • 以前は大丈夫だった床で足が滑っていた
  • 以前は上がれた段差を飛び上がれなくなった
  • フセや寝ている姿勢から、立ち上がるのに時間がかかるようになった
  • 今まで降りられていた階段で、足がついてこなくて転落した
  • トイレの場所はわかっているはずなのに失敗、粗相が増えた
  • 排泄に時間がかかるようになった
  • 夜中に起きていることが多くなった
  • 階段や段差の前で躊躇して動かない
  • モノにぶつかることがあった
  • 触るとビックリしたようなそぶりをする

トイレの粗相をするようになって「もしかして寂しさからくる嫌がらせ?」「いつの間にか悪癖がついてしまった」と、決めつけてしまうのは要注意。行動に表れている老化のサインを見逃しているかもしれません。
足を滑らせる、段差が上れない、立ち上がるのに時間がかかるなどは、筋力の低下により足腰が弱ってきたサイン。関節炎を引き起こしている場合もあります。トイレの失敗や排泄に時間がかかる、夜中に起きることが増える等は泌尿器などの病気かもしれません。「階段や段差の前で躊躇して動かない」「モノにぶつかることがあった」「触るとビックリしたようなそぶりをする」は視力など感覚器の機能低下の可能性が。このように、単なる老化と考えていたことがいろいろな病気のサインであることも。ほかに疾患がなく、筋力の低下だけなら、運動やトレーニングを促進することである程度予防をすることができるでしょう。

失敗を叱る前にパピーの頃に
戻ったつもりで再トレーニングを

トイレの場所はわかっているはずなのに失敗するのは叱るべき?

犬も年齢を重ねると関節機能や筋力の低下で行動がスローになります。トイレに行きたいと思っても、遠い場所にあると間に合わないことが増えてきます。また、感覚器の機能低下で「だいたいこのあたりで良いだろう」と大雑把な判断をして、トイレ付近やはみ出し状態で排泄してしまうこともあります。そんな時、飼い主さんは「トイレを失敗した」と考えがちですが、犬には失敗という概念はありません。叱ると不安を増長させるだけで何の解決にもなりません。まずは子いぬの頃にやったご褒美を与えて教える「トイレトレーニング」をもう一度行いましょう。

教え方は、『子いぬの育て方』サイトの中で紹介していますので参考にしてください。
老化の状況に応じて、トイレの場所を増やす、つまずかないように段差のない形のトイレに変更するなどの工夫も良いでしょう。高齢になると排泄のキレが悪くなり、便や尿が被毛についてしまうことも増えてきます。その場合は、局所の毛刈りなどを行うと良いですね。また、粗相をさせたくない場所では、マナーバンドやマナーウェアなども上手に利用しましょう。

家庭でできる
「聴力」「視力」の確認方法

「聴力」「視力」を家庭でも簡単に試す方法はありますか?

老化による行動の変化の原因として、感覚器の機能低下があります。名前を呼んでも反応しない、おもちゃに気がつかないなど、「ちゃんと聞こえているのか」「ちゃんと見えているのか」不安を感じた時は、おうちでチェックテストをして確かめてみましょう。

耳のチェックテスト

愛犬の死角で大好きなオヤツの袋などを持ってガサガサ音を鳴らしましょう。それに反応すれば聞こえています。全く反応しない場合は、聴覚障害の可能性があります。

眼のチェックテスト

お部屋に箱などの障害物を置いた向こう側から、声を出して呼びます。
障害物を避けて移動できたら見えている状態です。障害物にぶつかるまで気がつかないようなら視力障害の可能性があります。

異常があれば、まず動物病院へ行き、獣医師に相談を。
「聞こえていない」「見えていない」とわかったら、状況に合わせてコミュニケーションの方法を工夫しましょう。例えば、聞こえていないのなら、見える場所に手を出して気づかせてあげる。見えていないのなら、音やオヤツの匂いなどで誘導して、ぶつからないように移動させるなどです。感覚器の機能低下は、ワンちゃん自身も不安があるので優しいサポートを心がけましょう。

老犬に心地いいお部屋づくりで、
トラブルを防止しましょう!

高齢犬の日常生活をスムーズにするポイントは?

関節機能や筋力が衰えると段差の上り下りが難しくなり、足を滑らせて怪我をすることもあります。日常生活の中で老化のサインを見つけたら、早めに「老犬に心地いいお部屋づくり」をしましょう。ポイントは、「無理をさせずに活動的になれる空間」です。フローリングは、滑らないように絨毯やラバーマットを敷く、滑り止めとなるフロアコーティングをするのも良いでしょう。ソファなどの段差は、スロープか低い段を用意。転落の危険のある階段には、フェンスなどの防止策を考えましょう。ただし、スロープなど、新しいものを取り付けた場合には、フードなどのご褒美で誘導して、ちゃんと利用できるようにトレーニングすることも忘れずに。また視力が低下しているのなら、モノを減らし、ぶつかっても危険がないよう柔らかいものでカバーしましょう。足を滑らせる、踏み外すなどを経験して「危ない」と感じたら、その場所を避けるようになるワンちゃんもいます。

そのままにしておくと行動範囲が狭くなり、運動量が減ることでさらなる筋肉の低下が進み、寝たきりへの移行を助長する場合もあります。老化した体でも「活動的になれる安全な空間」を用意しましょう。