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猫のノミ・ダニ予防対策


猫に寄生するノミやダニは、命に関わる病気を引き起こすことがあります。
寄生虫は人の靴や服について室内に侵入するので、完全室内飼育の猫でも油断はできません。
人に感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)の原因にもなり、特にSFTS(重症熱性血小板減少症候群)には要注意!
猫を保護したときに寄生虫がいることもあるので、生態や予防について確認しておきましょう。

監修の先生内田 恵子 獣医師(元苅谷動物病院グループ統括院長)

小動物臨床に35年間従事した後、現在は動物病院運営のためのアドバイスを開始している。JAHA内科認定医、JAHAこいぬこねこの教育アドバイザーであり、動物病院で動物の入院中ストレスや診察中ストレスを軽減し、病院で問題行動を作らないような技量を広めるため活動中。

INDEX

ノミの生態と引き起こす病気

猫に寄生するのは主にネコノミです

ノミは昆虫の仲間で、猫や人に寄生する種類は主にネコノミです。成虫のサイズは2mm程度ですが、自分の体長の100倍以上もジャンプし、人の靴や服、猫について室内に侵入し、ベッドやソファなどで増えていきます。
暗くて湿ったところを好み、屋外では住宅街の庭や花壇に潜んでいます。たとえ庭だけでも屋外に出る習慣のある猫は、寄生虫に感染するリスクがあることを知っておきましょう。

気温13℃以上で繁殖を始めるライフサイクル

メスの成虫が寄生すると1〜2日後から毎日約30個の卵を生みます。卵から幼虫が生まれると脱皮を繰り返して大きくなり、さなぎを作ります。羽化して成虫になり、卵を生み始めます。ライフサイクルの期間は気温と湿度によって変わりますが、13℃を超えると繁殖し始め、特に6〜10月は数週間で一周して増えていきます。
吸血をする成虫はわずか5%で、残りの95%は卵、幼虫、さなぎの状態で見えないところに隠れています。

かゆみをともなう皮膚炎の原因になります

ノミに寄生されるとは、強いかゆみをともなうノミアレルギー性皮膚炎や、好酸球性皮膚炎を起こします。また、ノミが媒介する瓜実条虫にも注意が必要。グルーミングの際にノミが口から入ると、小腸で瓜実条虫が増えて下痢などを起こします。
また、ノミからバルトネラ菌に感染した猫に人が引っかかれたり噛まれたりすると、発熱やリンパ節炎を起こす「猫ひっかき病」になる危険もあります。

ダニの生態と引き起こす病気

大きいマダニと小さいヒゼンダニがいます

ダニはクモの仲間で、特に危険なのは人の死亡例が増えているSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の病原体を媒介するマダニです。公園の草むらや野山に潜み、犬に寄生するのはフタトゲチマダニの他、10種類もいます。体長5mm程度ですが、吸血すると10倍にも膨らみます。寄生されてもかゆみがないため、気づきにくいのが難点です。
また、顕微鏡でなければ見えないヒゼンダニ、ミミヒゼンダニもいます。すでに寄生されている動物と接触して感染する場合が多く、被毛の少ない部分に寄生します。

危険なマダニのピークは春と秋ですが、年間を通して活動しています

マダニは卵から羽化して幼ダニになり、脱皮を繰り返して幼ダニ、成ダニへと成長します。卵以外の段階で吸血し、十分に吸血したメスの成ダニは落ちて卵を生みます。マダニの感染は成虫が多い春と、幼ダニと幼ダニが増える秋がピークですが、年間を通して活動しています。

猫はモプラズマ感染症に注意、人は死亡例もあるSFTSが危険

猫はマダニに吸血された際にモプラズマが体内に入ってしまい、貧血や発熱を起こすモプラズマ感染症を発症することがあります。
人は寄生によってSFTSの病原体に感染すると発熱、下痢や嘔吐、皮下出血などの症状が起きます。国立感染症研究所の調査※では、2013〜2019年の間に全国で489人が感染し、66人も亡くなっています。その他、ボレリア菌によって発熱や皮膚疾患が起きるライム病もあります。

※国立感染症研究所より
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html

寄生虫がついたら駆除薬で対処する

動物病院で犬に合うタイプの駆除薬を処方してもらいましょう

ノミやダニを見つけたら、動物病院で駆除薬を処方してもらいましょう。駆除薬は食べたり皮膚につけたりするタイプがあり、いずれも全身に駆除の成分が広がり、ついている寄生虫の成虫を数時間から数日でほぼ駆除する作用があります。卵の孵化を抑制し、幼虫の発育を阻害する成分も配合されているタイプが大半。これらの効果は1カ月程度続くので、ついた寄生虫を駆除するだけでなく、予防としても使えます。
ノミやダニと一緒に犬回虫やフィラリアなどの体の中の寄生虫を駆除できる薬もあるので、犬に合うタイプを使いましょう。

チュアブル(錠剤)タイプ

おやつのようなにおいがついている食べる薬。原料に対してアレルギーがないことを確認しましょう。

スポットタイプ

皮膚に垂らす薬。皮膚疾患がある場合は避けたほうが無難です。投与後は一定期間シャンプーを控える必要があります。

スプレータイプ

体に噴射する薬で、生後間もない子犬にも使えるマイルドなタイプもあります。

緊急措置としてノミ取りシャンプーやノミ取りくし、ダニ取りピンセットを使う方法もありますが、完全に除去できない場合も。また、ダニをつぶすと卵が飛び散ったり頭部(口器)だけ残ったりする心配もあるので、早めに動物病院を受診しましょう。

大切なのは寄生させない予防対策

駆除薬を予防として使いましょう

動物病院で処方される駆除薬を「予防薬」としても使いましょう。寄生虫の活動が活発になる春から秋にかけて定期的に投与することが重要です。もし寄生されても吸血前に速やかに駆除できるのがポイント。
屋外に出る猫がいる多頭飼育の場合は感染のリスクが高くなるので、すべての猫に予防薬を投与することが重要です。もし飼い主さんが出かけた際に服や靴にノミやダニがついていた場合でも安心でしょう。

寄生虫が室内で繁殖できない清潔な環境づくりを

寄生虫は繁殖力が強く、室内に侵入されると完全に駆除するには時間がかかります。室内の空気の入れ替えやベッドなど布製品の洗濯を心がけ、卵や幼虫が隠れやすい部屋の隅やカーテンの下は掃除機をかけて生活環境を清潔に保つこと。猫を定期的にブラッシングすることも役立ちます。
新たに猫を迎えたりのら猫を保護したりしたときは、自宅に連れ帰る前に動物病院へ行き、健康診断を兼ねて念のため寄生虫のチェックをお願いしましょう。診療時間外でやむを得ず連れ帰った場合は、掃除がしやすいお風呂場や部屋の一角で休ませ、翌日速やかに動物病院を受診すること。この場合でも先住猫に予防対策をしておけば安心です。
ノミ・ダニはしっかり予防して、寄生させない、侵入させない、繁殖させないように心がけましょう。