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猫の生活習慣病とは

無邪気に遊んだり、
あなたのそばに寄り添ったり、
いつも癒してくれる存在の猫ちゃん。
ずっと健康でいてもらうために、
さまざまな病気を引き起こす可能性の高い
「生活習慣病」について、
専門家にお聞きしました。

お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。

INDEX

「生活習慣病」は毎日の
積み重ねで発症する!?

猫の生活習慣病って何?どうすれば予防できるのでしょうか?

いっしょに暮らす猫ちゃんには、ずっと健康でいてもらいたい。そう思っているのに、病気になってしまうことはあります。しかしそれが、飼い主さんのちょっとした工夫で防げるのなら、やっておきたいと思いませんか?「生活習慣病」とは、毎日の生活習慣の積み重ねで発症する病気。今回は、そんな「猫の生活習慣病」の予防についてお話ししましょう。
猫の疾患は、遺伝的な素因が関わっている場合も多く、「生活習慣病」との確実な線引きはなかなかできません。しかし、糖尿病、腎不全、泌尿器疾患、関節疾患、歯周病、腫瘍は、猫にもよく見られる病気です。なかでも、肥満や歯周病が原因で進行する病気は、猫ちゃんの正しい食生活や日頃のケア、運動習慣を欠かさないことでかなり防げる「生活習慣病」といえるでしょう。つまり、飼い主さんのちょっとした心がけやケアで予防が可能です。

猫の食生活、運動習慣、ストレスが
病気の発症・進行に関わっている

猫の「生活習慣病」は、増加傾向なのでしょうか?

獣医学の発展によって、ワクチンなどで防げる病気も増えました。さらに室内飼育が増えたため事故などによる怪我も減少しています。そのため、以前にくらべ高齢猫が増えているので、年齢と共に発症数が増える疾患は、すべて増加傾向だと言えそうです。生活習慣で発症する病気は、それまでの蓄積が関係してくるので7歳ぐらいから発症しやすくなると考えてください。
「家庭どうぶつ白書2015」(アニコム)によると、膀胱炎などの泌尿器疾患、腫瘍疾患、口内炎や歯周病などの歯・口腔疾患、糖尿病などの内分泌疾患、心筋症などの循環器疾患などが高齢になるほど増加傾向にあります。
出典:アニコム『家庭どうぶつ白書2015』

猫の「生活習慣病」の原因として考えられるものは?

「肥満は生活習慣病の元」と言われるように、肥満によって、糖尿病や高脂血症、高血圧などの病気の多くが関係しています。これは人間だけでなく、猫の「生活習慣病」も同様です。人間の場合は、不適切な食生活、運動不足、ストレス過剰、睡眠不足、喫煙、飲酒などが、発症・進行に深くかかわっているとされていますが、猫の場合も食生活や運動習慣が関係しています。
偏食ぎみの猫ちゃんについ人間の食べ物を与えてしまったなど、心当たりのある飼い主さんは気をつけましょう。また運動不足による肥満も多いので、家の中であまり活動をしない猫ちゃんは注意が必要です。特に置き餌で、常にフードが器に入っていると、お腹が空いて食べ物を求めて活動することがないため、太りやすくなります。
さらに、常に騒音にさらされている、安全で落ちつける場所がないなど、慢性的なストレスを感じる環境にいると、生活習慣病に関わらずあらゆる病気の原因になる可能性があります。

不適切な食生活で増える肥満猫

偏食になると猫には、どんな影響があるのでしょうか?

比較的なんでも食べる犬と違い、猫は非常に偏食傾向が強いので、つい人間の食べ物を与えてしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか?煮干しや塩焼きの魚、かまぼこなどの魚系だけでなく、ハムやソーセージ、チーズ、ミルクなどを好む猫ちゃんもいます。しかし、キャットフードをあまり食べないからといって、猫ちゃんが好むものだけを与えていると健康面に影響が出てきます。カロリーオーバーで様々な生活習慣病を引き起こす肥満の原因になるほか、塩分過多により心臓病や腎臓病にも影響します。そのため、極端な偏食に陥らないよう、予防しておくことが必要です。
総合栄養食のキャットフードは栄養バランスに優れているので、年齢や体調に合ったものを選び、それをメインに適正量を与えましょう。さらに偏食をさけるため、若いころからキャットフードも魚味だけでなくチキン味のものを与えるとか、ドライだけでなく缶詰タイプのものを与えるなど、さまざまな風味や食感に慣らしておくと良いでしょう。手作り食を与える場合も栄養バランスを考えて、適正量をあたえましょう。

運動は体重維持やストレス発散
のためにも大事

運動不足ぎみの暮らしは、どんな影響を及ぼすのでしょうか?

健康に長生きさせるためには、事故などがおきにくい室内飼いをおすすめしますが、室内飼育は猫にとって運動不足になりやすい環境です。猫は捕食動物であり、本来であれば毎日獲物を追いかけ、捕まえて食べるという生活をするはずの動物です。しかし、捕食活動の必要がなく、動かなくても食べ物が与えられる状態にあると、運動不足になってしまいます。運動不足になると、肥満になり、それに伴う生活習慣病を招く可能性も高くなります。
さらに猫の運動不足は、問題行動を引き起こす原因にもなり得るので注意が必要です。例えば、飼い主さんや同居動物をハンティングの獲物とする攻撃行動や、ストレスによって同じ動作を反復する「常同障害」、例えば同じところばかりを何度もなめ続けて脱毛や皮膚炎を起こしてしまう「過剰グルーミング」などがみられる場合もあります。運動不足で猫が慢性的なストレスを感じていると、免疫力低下で他の病気も発症しやすくなります。
室内飼いでも、猫じゃらしで遊ぶなどの時間を設けることで、狩猟本能を刺激し、愛猫のストレス発散や運動不足の解消にもつながります。