1. トップ
  2. ウェブマガジン ペットと、ずっと。
  3. 統計から見る犬種の性格<後編>

統計から見る犬種の性格<後編>

前編に続き、犬の性格について紹介していきましょう。
後編ではより詳しく犬種による性格の違いを見ていきます。
さらに小型犬、中型犬、大型犬に分けて暮らしのアドバイスを専門家にお聞きしました。

お話を伺った先生菊水健史教授
(麻布大学)

麻布大学獣医学部動物応用科学科、介在動物学研究室の教授。獣医学博士。専門は動物行動学で、動物の心や未知の能力の解明を目指して研究を行う。著書は『犬のココロを読む』(岩波書店)、『日本の犬』(東京大学出版会)など。

お話を伺った先生下薗なおこ獣医師
(麻布大学)

麻布大学獣医学部獣医学科卒業。犬の行動学や飼い主とのコミュニケーションに興味を持ち、菊水教授に師事しながら、臨床獣医師として動物病院で研修中。

ライター:金子志緒

INDEX

犬種によって性格(気質)が
違う理由

オオカミから400を超える犬種が目的別に生み出されました

犬種をグループ分けして性格診断「C-barq(シーバーク)」の結果を見たところ、グループごとに傾向が見られることがわかりました。犬種によって性格が違う理由は、人間が犬に任せる仕事に合わせて改良してきたからです。そもそも犬は穏やかなオオカミが人間に近づき、その人懐っこいオオカミからさらに人間の利用目的にあう個体を選んで生み出した動物です。近代になり、犬の作業に合わせて改良が進み、現在では400を超える犬種が誕生しました。
たとえば牧羊犬のボーダー・コリーは体力と知力に優れ、人間が離れたところでも羊の群れを上手に誘導する働き者。狩猟犬のビーグルは嗅覚を使って獲物を追跡したり、ハンターのもとへ獲物を運んだりします。愛玩犬のパピヨンは小さくて甘え上手で、飼い主さんにかわいがられるための容姿を備えているでしょう。中にはあまり改良されていない犬種もいます。「古代犬&スピッツ」グループに所属する柴犬は自立心や警戒心が強く、原始的な犬の特性を残しているのです。次からは、日本で多く飼われている代表的な犬種の性格や暮らしのアドバイスを紹介します。

「小型犬」の性格と暮らしのアドバイス

トイ・プードル

甘えん坊でさみしがりやなので、時間と愛情をたっぷりそそぎましょう。ただし甘やかしすぎると分離不安の傾向が現れます。オスワリやマテなどの基本的なしつけを行い、かわいがるだけではなく物事にけじめをつけること。ぬいぐるみのような外見に反して活発なので、運動を兼ねた散歩も必要です。

チワワ

小さくてもしっかり自己主張をするタイプ。かわいがるだけではわがままに育ってしまうかも。しつけや散歩の時間を通じてコミュニケーションをはかり、良い関係を築くことが大切です。繊細で怖がりの一面もあり、見知らぬ人やチャイムの音に吠えやすい傾向もあるため、早めに対策を行いましょう。

ミニチュア・ダックスフンド

アナグマ猟の猟犬がルーツの犬種なので、吠えやすく強気なところがあるやんちゃな犬種です。小さくても活発な性格は、アウトドアが好きな人に向き。子犬の頃から基本的なしつけに加え、落ち着いて過ごす練習をしておきましょう。吠える問題を解決したい場合、専門家に相談することをおすすめします。

ヨークシャー・テリア

甘えん坊なところがあるので、かわいがるだけでは分離不安の傾向を助長するかもしれません。その一方、猟犬のテリア系の血を引く勇敢なところもあります。やや興奮しやすく、おもちゃを獲物に見立てて噛みついたり振り回したりします。歩くだけでなく遊びを通じて関係づくりを心がけましょう。

シー・ズー

おっとりした穏やかな性格で、飼いやすい犬種として知られています。マイペースなところがあり、基本的なしつけは可能でも、キビキビとトレーニングをするのはやや苦手。古代犬の血を引く犬種なので、まれに強気なタイプや人とあまりかかわらないタイプもいます。気になることがあったら早めに専門家に相談してください。

「中型犬」の性格と暮らしの注意

柴犬

家族に対しては一途でも他者を警戒する傾向があるので、パピートレーニングで社会性を身につけさせることが重要です。自立心が強くスキンシップを好まないため、適切な距離感で付き合うことを心がけましょう。生まれつき所有欲の強いタイプの場合、犬の目の前でごはんやおやつを取り上げるのは避けましょう。

  • 「日本犬保存協会」では柴犬は小型犬に分類されています。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

ウシのかかとを噛んで追い立てる牧畜犬がルーツ。活発で意欲の高いタイプで、散歩だけでなく走ったり追いかけたりする運動が必要。一緒にスポーツも楽しめるでしょう。口筋に厚みがあり、噛む力も欲求も強いため、天然ゴム製のおもちゃなど噛めるものを与えるのも一案です。

フレンチ・ブルドッグ

愛嬌のある顔立ちやしぐさで家族を楽しませてくれる甘えん坊。その一方、興奮しやすく落ち着きにくい傾向も見られます。短頭種は体温調節が苦手で呼吸器疾患のリスクがあるため、興奮させすぎないことが健康管理のうえでも重要。クールダウンのしつけをして心がけましょう。

ボーダー・コリー

仕事が大好きな働き者で、運動能力もたいへん高いのが特徴です。家庭犬として暮らす場合も、全力で取り組める作業と十分な報酬(ほめ言葉とごほうび)を与えましょう。基本的なしつけだけでは満足できない犬種で、ディスクやアジリティーなどのスポーツを取り入れる必要があります。

「大型犬」の性格と暮らしの注意

ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー

穏やかでフレンドリーな性格で、家族にかまってもらうことが大好き。Retrieve(回収する)が犬種名の由来となっているように、ものをくわえて持ってくる作業を好みます。そのときに誤飲してしまうケースがあるので注意が必要です。ラブラドールよりもゴールデンのほうが興奮しやすい傾向があります。どちらも小さいうちから基本的なしつけを行いましょう。

家庭に合う犬を迎えるために
知っておきたいこと

ペットショップから迎える前に犬種の性格を確認しましょう

ペットショップで子犬を迎える場合、短時間では本来の性格を見極めるのは困難です。事前に犬種の性格を確認しておき、見た目などではなく、家庭の生活スタイルに合った犬を選びましょう。信頼できるペットショップのスタッフに相談するのも一案です。

子犬はブリーダーのところで母犬を見ると成長後が予測できます

ブリーダーから犬を迎えるときは、事前に犬舎を見学させてもらいましょう。犬の性格は母犬や環境の影響を受けるので、成長後の性格や姿が予測できます。家庭に合いそうな母犬の子犬を選ぶのも良い方法です。

保護犬や成犬は猫をかぶるのでトライアル期間に確認しましょう

保護犬や成犬を迎える場合、トライアル期間(互いの相性を見極める期間)を設けている施設や団体を選びましょう。ただし柴犬や柴犬系雑種は、2カ月近く本当の性格を隠して猫をかぶる場合があります。犬を世話しているスタッフに確認しましょう。

事前に性格を確認したほうがいい理由は?

犬種にもよりますが、犬は15年近く生きます。見た目だけでなく犬の本来の性格を理解し、家族の性格やライフスタイルも考慮したうえで合う犬種を迎えてください。たとえば運動が好きな犬種と忙しい飼い主さんはミスマッチかもしれません。
また、手のかかる幼少期に適切に育てられた子犬は、社会性を備えて将来の問題行動の発生が下がることがわかっています。成犬や老犬でも手厚いケアでフォローが可能です。大切な家族を迎えるつもりで慎重に考えましょう。