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犬の老化と見た目に表れる
老化のサイン

まだまだ若いと思っていても、シニア期に入った愛犬の見た目に変化が表れると「病気?」それとも「老化?」と気に病むもの。「老化」とは?そして、見た目に表れる老化のサインについて専門家にお聞きしました。

お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。

INDEX

「老化」とは、加齢と共に
カラダの機能が低下すること

犬の「老化」とはどういうものなのでしょうか?

愛犬がシニアといわれてる時期に突入。「最近、目が白っぽく見える」「イボのようなものができた」など、愛犬を見ていて以前と違う異変を感じ、これは「病気?」それとも「老化?」と気になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。動物であれ、人間であれ、老いは必ず訪れるもの。
「老化」とは、身体のさまざまな生理的機能が加齢に伴い減退し、元に戻らず進行していくことを意味します。さらに、この「老化」が進行することによって、さまざまな疾患にかかりやすくなってくるので注意が必要です。老化が進んだ機能は元に戻るわけではありませんが、早く気がつけば悪化を防ぐことができます。そのカギを握っているのは、飼い主さんの「気づき」です。飼い主さんが老化のサインに早めに気づいてあげることで、病気の予防や対策につながりますので日々の愛犬の様子をよく観察しましょう。もちろん、健康で元気なうちから注意することで「老化」のスピードを遅らせることも可能です。

犬の7歳から9歳頃は
老化のサインが表れ始める時期

犬のシニア期は何歳から始まるのですか?

環境省が発表している犬と人間の年齢のめやすによると、犬の7歳は人間の44歳~54歳前後。人間だとまだまだ働ける年齢だと思います。しかし無理をすると体に堪える「中年期」という表現が合うのではないでしょうか?
人間の「中年期」は、白髪の増加や毛量の減少、シワが増えるなどの見かけの変化に加え、疲労回復に時間がかかるなど、「老化のサイン」を感じて、健康面の不安が出てくる頃でもありますよね。人間の中年期に該当する犬の場合も7歳から9歳頃から、徐々に老化のサインが出始めます。そして10歳から12歳頃の本格的な高齢期に入り、老化が顕著に現れ始め、高齢性疾患も多くなります。年齢換算表は小型・中型・大型とざっくりわけていますが、実際には犬種や個体差によっても寿命や老化のスピードが異なります。その犬種の平均寿命と人間の平均寿命の年齢に当てはめて、年齢換算する方法もあるので参考にしてみると良いでしょう。

図:犬と人間の年齢のめやす ※品種等によってもこの関係は違ってきます 出典:環境省自然環境局総務課動物愛護管理室(2009)「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」 大型犬…1歳は人間の12歳、2歳は人間の19歳、3歳は人間の26歳、5歳は人間の40歳、7歳は人間の54歳、10歳は人間の75歳、12歳は人間の89歳、15歳は人間の110歳 小型犬・中型犬…1歳は人間の15歳、2歳は人間の24歳、3歳は人間の28歳、5歳は人間の36歳、7歳は人間の44歳、10歳は人間の56歳、12歳は人間の64歳、15歳は人間の76歳]

「見た目」に表れる老化のサインをチェックしてみよう

「見た目」に表れる老化のサインには、どんなものがあるのでしょうか?

些細な愛犬の変化で、老化のサインに気づくこともあります。まずは「見た目」から、気づきやすい老化のサインとしてチェックリストを用意しました。日頃から観察できる見た目の変化をチェックしてみてください。

見た目の変化チェックリスト

  • 白髪が増えた。ヒゲが白くなった。
  • 被毛のツヤがなくなってきた。パサつきやすくなった。
  • 毛量が減ってきた。被毛が伸びるのが遅くなった。
  • 皮膚の感触にハリがない。
  • 抜け毛が増えた。
  • 目が白っぽく見える。
  • 太ってきた。痩せてきた。
  • 口臭が出てきた。
  • 目ヤニが増えた。
  • イボなどのできものができた。

いくつ当てはまりましたか?
このような老化のサインは、加齢に伴う生理的機能の低下によって現れ始めます。例えば、被毛関連の変化は、新陳代謝が減少している影響やホルモン機能の低下などが考えられます。ですが、ここで注意したいのは、老化が進むといろんな疾患のリスクが高まる点です。放置して良いものもあれば、疾患につながる場合もあります。
実は、「老化現象」と病気による「症状」の境目は、診察しないと獣医師でも判断が難しいのです。単なるイボだと思っていたできものも悪性腫瘍の場合もあります。気になったポイントは、早めに動物病院の診察を受け、さらによく注意して変化がないか観察しましょう。

大切なのは飼い主さんの
日々の「気づき」。
老化による病気も
早期発見がカギ!

シニア期を迎える愛犬の飼い主として、しておくべきことは?

家庭でできる健康チェックは、ぜひ飼い主さんにやってもらいたいことです。老化のサインはもちろん老化が原因となる病気の早期発見には、一緒に暮らす飼い主さんの「気づき」が非常に重要です。家庭でも、スキンシップを兼ねたブラッシングタイムや歯磨きタイムなどを利用して、被毛や皮膚の状態、眼のまわり、口のまわり、耳の周りなど、見た目や匂い、感触などに変化がないかよく観察しましょう。単なる老化と思っていたことが実は病気の初期症状ということは意外に多いのです。健康チェックで「気づき」があったなら、健康診断を兼ねて動物病院で診てもらってはいかがでしょう。病状が進行してから慌てるよりも、早期発見早期治療をめざしましょう。また、毎日の優しいブラッシングは、被毛を美しく保つだけでなく、皮膚の血行もよくなり、アンチエイジングにも役立ちます。さらに歯磨きは、歯周病だけでなく歯周病菌が原因になって起こるさまざまな病気を防ぐことになります。愛犬の若々しさを少しでも維持できるように、健康チェックと共にぜひ続けましょう。