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猫のオーラルケア

CAT

猫の健康管理の中でも、うっかり見過ごしてしまいがちなのが口の中のケア。
猫の口の中の状態をチェックする習慣がないと、気がつかないうちに病気が進行していることもあります。
猫のオーラルケアについて、フジタ動物病院院長 藤田桂一先生にお話を伺いしました。

お話を伺った先生藤田 桂一 獣医学博士・獣医師
(フジタ動物病院院長)

「心と心の触れ合いを大切に」をモットーに、質の高い医療サービスを提供し、歯科・口腔疾患において二次専門病院として位置づけられる「フジタ動物病院」(埼玉県上尾市)の院長。日本小動物歯科研究会会長をはじめ、獣医療の多くの学会・研究会の理事や評議員を務め、獣医学術専門誌、AHT専門誌、および小動物情報誌の執筆も手掛けている。
http://www.fujita-animal.com/

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

猫の臼歯はハサミ型で
歯垢は一週間で歯石に変化!
猫の口の中のことを知っておきましょう!

肉食である猫の歯は、人間の歯と違って全部尖っているのが特徴です。人間の前歯にあたる切歯が上6本、下6本、犬歯が上2本、下2本、奥歯にあたるのが臼歯で、前臼歯と後臼歯があり、前臼歯が上6本、下4本、後臼歯が上2本、下2本の計30本が並んでいます。臼歯というと、臼のような形を想像するかもしれませんが猫の場合は、尖っていて、歯のかみ合わせもハサミの刃同士が合わさるような鋏状咬合(はさみじょうこうごう)になっています。ちなみに人間の奥歯は、うすのような形のすり鉢状咬合で、噛むことで食べ物をすり潰すことができるのですが、猫の臼歯はハサミと同じで、肉を切り裂く役割になっていて、口を閉じた時に上下の歯の山と谷がギザギザの形になるのが特徴です。

歯と本数の図(切歯:上6本、下6本)(犬歯:上2本、下2本)(前臼歯:上6本、下4本)(後臼歯:上2本、下2本)※永久歯の場合

そんな尖った形の猫の歯は、人間の歯のような凹みがありません。さらに人間の口の中が弱酸性なのに対して、猫の口の中はPh8.0~9.0のアルカリ性。虫歯の菌は、歯の凹みの中や酸性の環境で繁殖するため、猫の口の中では繁殖が厳しく、猫に虫歯はありません。しかし、アルカリ性の口の中にも問題があり、人間よりも歯垢が歯石になりやすい状態です。この歯垢や歯石がクセモノで、口の中の病気の代表格である歯周病を引き起こします。実は、3歳以上の猫のなんと8割は歯周病になっていて、悪化すると食事ができない、あごの骨が溶ける、皮膚に穴が開くなど、重い病気になることもあります。猫の歯垢は約一週間で歯石になり、さらにその上に歯垢が付きやすくなります。だからこそ、猫にもオーラルケアが必要なのです。

今すぐ猫ちゃんのお口の健康チェックを!
こんな症状があったら口腔疾患かも

うちの猫ちゃんは大丈夫かしら?と思ったら、まず口の健康チェックをしてみましょう。口をあけて、歯の付け根を見て歯垢や歯石がついていないか、歯茎が赤くなっていないかなど、確認しましょう。ただし、口をさわられることに慣れていない猫ちゃんは、嫌がる可能性があります。そんな時は、無理をせず慣れさせるところから始めてください。また、口腔疾患は、口の中以外にも以下のような行動やしぐさがあらわれることがあります。口の中を確認できない場合は、毎日の生活で気になるところがないかチェックしてみましょう。

口腔疾患が疑われる行動やしぐさ

  • 口臭がある
  • 食べる時間が長くなった
  • 片側の歯だけで咬んでいるようだ
  • 食事中に奇声を上げる
  • 口を開くことをいやがる
  • 硬い物を食べなくなった
  • 口の周りを触られるのをいやがる
  • よだれが多い
  • 口の中に入れたものをすぐ出してしまう
  • 口を床や地面にこすりつける
  • 前肢で口の周りをぬぐうしぐさをする
  • 性格が凶暴になった
  • 食事をしているときによくこぼす
  • 食欲はありそうだが、食べられない
  • 食事中に片方に頭を傾けている
  • くしゃみや鼻水が出る
  • グルーミングをしなくなった

気になる症状があったら、動物病院で具体的な症状を伝え「口腔疾患」の可能性について診てもらうと良いでしょう。

猫のオーラルケアは歯磨きが一番。
目指すは歯ブラシでの歯磨き上手!

虫歯にならない猫ちゃんですが、歯周病予防のためには、歯磨きをして歯垢を取っておくのが最良のケアになります。猫の場合、上の後臼歯のそばに唾液腺の出口があり、唾液中のカルシウムやリンが歯垢に付着して、歯石へと変化するので、特にその周囲が歯周病になりやすいのです。そのうえ歯垢は、歯の根元や歯茎の境目の歯周ポケットに溜まります。そんな狭い場所の歯垢を取るには、歯ブラシを使うのが最適です。使用する歯ブラシは、人間の歯間用の毛束が一つにまとまったヘッドの小さいタフトブラシや猫用の歯ブラシが良いでしょう。特に毛先が細く柔らかいタイプがオススメです。

使用する時は、必ず水で濡らしてください。乾いたままの歯ブラシだと、歯茎を傷つける場合があるので注意しましょう。そして、猫用の歯磨きペーストをつけて、歯周ポケットのある歯と歯茎の境目に45度になるように歯ブラシの先を当てて、左右に小刻みに毛先を動かします。歯ブラシを親指と人差し指ではさむペングリップで持ち、肩の力を抜いて、脇を閉めて、歯ブラシの毛先が少したわむ程度の軽い力で磨くのが理想です。また、犬猫用の歯磨きペーストは、人間用と違いすすぐ必要がなく、口の中に残して大丈夫です。人間用のものは、フッ素などが含まれており、猫は消化器障害を起こす可能性があるので使用しないでください。このようなオーラルケアを毎日続けましょう。ただし、すでに歯周病がある場合は、歯磨きをすることで痛みを伴う可能性があるので、動物病院で治療してから始めてください。

無理せずステップを踏んで
オーラルケアをスタートしましょう!

猫ちゃんの歯磨きにハードルの高さを感じる飼い主さんも多いはずです。確かに、いきなり歯ブラシを持って口に入れようとすると、逃げたり嫌がったりしますし、それを捕まえて無理に歯磨きをすると、猫と飼い主さんの関係が悪くなってしまうのでNGです。歯磨き上手になるコツは、細かなステップを踏んで、慣れさせることが重要です。猫ちゃんの好きな缶詰や、気持ちの良いところをブラッシングやマッサージすることなどをご褒美にして、良いイメージをつけながら、ステップを上げて行きましょう。

① 口を触ることからスタート

猫ちゃんがリラックスしている時に、そっと口を触ってみましょう。そして、すぐに猫ちゃんに触らせてくれたご褒美に好物の食べ物やマッサージなどを提供しましょう。これを繰り返し、徐々に慣らしていきます。慣れたら、頬の外から、指で口まわりをもみ、ご褒美の提供を繰り返します。

② 指でペーストを塗ってみましょう

唇をめくり、ご褒美を与えます。慣れてきたら猫ちゃんの歯を指でそっと撫でてみましょう。もちろん、ほめてご褒美を繰り返します。嫌がらない状態なら、猫用歯磨きペーストを指につけて、猫ちゃんの歯に塗って、ほめてご褒美を繰り返します。

③ 綿棒で外側の歯磨きにトライ

指で歯を触れるようになったら、歯ブラシよりも持ち手が細く先端が小さい、口に入れても違和感の少ない綿棒に歯磨きペーストをつけて、歯の外側磨きに挑戦します。綿棒は、猫ちゃんが口を閉じた状態でも動かせ、このステップがあると歯ブラシへの移行もしやすくなります。

④ 口を開けて歯磨き、歯ブラシにも慣れさせて

外側の綿棒磨きができるようになったら、歯磨きペーストをつけた歯ブラシを口に入れて、慣れさせていきましょう。さらに、上あごの犬歯の後ろ側を人差し指と親指で持ち、優しく巻き込むと口を開くことができるので、嫌がらないようなら、内側にも挑戦しましょう。

藤田先生からのアドバイス

歯磨きは最大の歯周病予防。けれど意気込むのは失敗の素。

まだまだ歯磨き習慣のある猫は少なく、どうしても手遅れになってから、診療に訪れるケースが多いのが実状です。猫の歯は約一週間で歯石になるので、最低週1回、慣れさせるためにも可能なら毎日歯磨き練習にトライしてほしいですね。ただし、「歯磨きをするぞ!」と意気込むとつい力んでしまうので注意が必要です。特に無理やり押さえつけたり、大きな声で「じっとしなさい」などと言いながら歯磨きをすると、猫は警戒して飼い主さんから逃げるようになります。そうならないために「歯磨き=良いイメージ」になるように、飼い主さんも猫ちゃんもリラックスした状態で行うのがベストです。ブラッシングが好きな猫ちゃんなら、プラッシングの合間に歯磨きタイムを入れるのもいいですし、猫じゃらしなどでの遊びが好きな猫ちゃんなら、歯磨きをさせてくれたご褒美にいつも遊んであげることをセットにするのもいいですよ。大事なのは、焦らず好きなこととセットにして徐々に慣れさせること。慣れさせるために歯ブラシに好きな缶詰の汁をつけて磨くのもOKです。

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